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古代ギリシアの概観、ポリスについて

(第3章1/15)

第3章:古代ギリシア

今回から古代ギリシアの解説に入ります。

注意事項

その前に、繰り返しになりますが、読む際の注意事項を説明します。

読む際に注意していただきたいことがあります。重要な用語、試験で出題される用語は色を付けていますが、その用語を最初からすべて覚えなくても構いません。大切なことは歴史の大まかな流れをつかむことです。繰り返し読むにつれて、細かい用語も覚えられるようになります。

高校生または受験生の読者の皆様への注意事項です。本サイトの説明は、入試で出題される範囲より少し広い範囲を扱っています。ですから、いきなり全部を覚えようとしないでください。また中間、期末試験の直前対策には各記事の最後の「まとめ」を見るだけでも結構です。読みながら要点をまとめられるようになれば、得点アップが狙えます。そのレベルまで繰り返し読みましょう。4回繰り返し読めば自信が付きます。

さて古代ギリシアとは、初めは紀元前3000年頃から地中海のクレタ島に興ったクレタ文明から、マケドニアのアレクサンドロス大王の後を継いだエジプトのプトレマイオス朝の滅亡(紀元前31年)までの時代を指します。

まず古代ギリシアの3000年に及ぶ歴史を大まかに見てみましょう。今回は古代ギリシアの気候や地理的条件を説明し、それから古代ギリシアの歴史を調べる上で最も重要な、ポリスというギリシア独自の都市について説明します。

3.1 古代ギリシアの概観、ポリスについて

ギリシアの気候、地理的な条件

ギリシアは小アジア(現在のトルコ共和国)の西側、バルカン半島の最南端にあります。

東側にはエーゲ海が広がり、エーゲ海の向こう側には小アジアの海岸線が広がっています。

ギリシアの地形は平地が少なく、海岸線が入り組んでいます。年間の雨の量は少なく、その雨も秋から冬に集中して降ります。

さらに、土地はあまり雨水を蓄えることが出来ない石灰岩や片岩質の土地が広がっています。そのため、麦などの穀物を植えることにはあまり向かない土地となっています。逆にオリーブ、ブドウ、イチジクなどの果樹栽培が盛んです。そこで古代ギリシアの時代より、オリーブオイルやぶどう酒(ワイン)がこの地方の特産品として、広く外国の土地に輸出されました。

平野が少ない地形なので、道路などの陸上の交通はあまり発達しませんでした、その代わりに船による海運が発達しました。また一年中静かなエーゲ海の存在も、海の交通、海運の発達を後押ししました。

このように平野が少なく、耕作するための広い土地も少ないことが、古代ギリシアがメソポタミアや古代エジプトとは違った独特の文化を持ち、独自の発展を遂げた理由として挙げられます。

特に、ギリシアの都市が食料を得るのに、それを輸入に頼っていたことが大きな特徴です。それは主食となる穀物の栽培があまり行われず、それを輸入しなければならなかったからです。

第1章の都市の説明のところで、都市は食料を農村から集めなければならない、と述べました。まさしく、ギリシアの都市はそのような状況でした。そこで各都市は、オリーブオイルやぶどう酒、他には様々な工芸品を輸出して、食料となる穀物を輸入しました。

このようにして、ギリシアの各都市は他の都市と活発に交易(輸出と輸入)を行いました。この交易を通して、ギリシア人たちは周辺の様々な文化を吸収し、独自の文化を発展させました第1章の都市と文明の説明で、都市での人の交流が活発になると、都市のスタイルが磨き抜かれて、洗練される、と述べました。そのようなギリシアの都市の洗練された文化は、後の時代に広い地域に渡って大きな影響を与えました。

ギリシアの歴史の区分

これまでギリシアの独特の気候や地理的条件と、それによって生み出された文化について説明しました。次に、古代ギリシアの歴史を大まかに分けてみましょう。

古代ギリシアの3000年に渡る歴史は主に3つの時代に分けることが出来ます。本サイトでは時代を簡単に分けるために、以下のように分けることとします。

ポリス以前の時代、ポリス全盛時代、ポリス以後の時代、の3つです。

さて、ここで「ポリス」という言葉が出てきました。ポリスは「都市国家」と訳されることもありますが、それぞれのポリスは政治的に独立していました。

「都市国家」は第2章で、メソポタミアに最初に文明を築いたシュメール人のところで出てきました(こちらを参照)。しかし、ギリシアのポリスはシュメール人たちの都市国家とは政治的な体制、仕組みが全く違います。ですから古代ギリシアを知るためには、ギリシアで独自に発展したこのポリスを理解することがいちばん大切です。

ポリスの発展の歴史はこれから詳しく解説しますが、その前にポリスとはどのようなものか、ざっと見てみましょう。

ギリシア独自の都市国家、ポリス

ポリスは城壁に囲まれた中心となる都市と、その周辺の農地から成ります。ポリスの市民は貴族平民から成り立っていました。貴族といっても土地を独占して農民を働かせる、といった者たちではなく、平民も自分の土地を持ち、そこで農業を営んでいました。農業は集団で広い土地を耕すというよりも、平民がそれぞれの土地で細々と果樹栽培などを行っている、といった様子です。

貴族、平民による市民の多くは奴隷を持っていました。今では人を持ち物のように扱うことは許されない、と考えられていますが、この時代には誰かの持ち物である人、つまり奴隷が当たり前のようにいました。

古代ギリシアの時代には華々しい文化が栄えていました。しかし、それは日々同じような労働を主人の下でこなしていた奴隷の働きがあってこそです。

ポリスはそれぞれが独立した国家でしたが、ほとんどのポリスは小さな街のようなものです。そのため、ポリスの市民は皆ポリスを維持するために、市民としてポリスのために活動することが求められました。

皆さんの中には、古代ギリシアの時代には市民は誰でも政治に参加できた、という話を聞いたことがある人がいるかもしれません。ですが、それも市民の下で働かされていた奴隷のおかげだ、と言えます。ちなみに、市民の中の貧しい平民も政治に参加出来るようになるのは、ギリシア最大のポリスであるアテネの全盛期、将軍ペリクレスの時代です。

古代ギリシアのポリスの特徴は、前の段落でも述べた、市民が政治に参加する機会が開かれていた、という部分です。しかし、市民の政治参加という点では、次に述べることが大切です。これがポリスを理解するポイントです。

それは、兵士としてポリスを守るために行動した者が政治に参加する権利を持った、という点です。この見方を中心にしてポリス社会の政治の歴史を見ると、古代ギリシアの歴史がすっきりとまとまります。

この記事では、古代ギリシアの歴史のいちばん最初として、ギリシアの気候と地理的条件、そして最も重要な用語である、ポリスについて説明しました。

次の記事では、古代ギリシアの歴史を3つの時代に分け、それぞれの時代の要点を解説します。

この記事のまとめ

  • ギリシアの地形は平地が少なく、海岸線が入り組んでいる。年間の雨の量は少ない
  • ギリシアは石灰岩や片岩質の土地が広がり、麦などの穀物を植えることにはあまり向かない。オリーブ、ブドウ、イチジクなどの果樹栽培が盛ん。オリーブオイルやぶどう酒(ワイン)が特産品として輸出された
  • 逆に食料を得るのは輸入に頼っていた。各都市は、オリーブオイルやぶどう酒、他には様々な工芸品を輸出して、穀物を輸入した
  • 平地が少なく、陸の交通は発達せず、船による海運が発達した
  • 他の地域との活発な交易によりギリシアの都市は文化が洗練され、その文化は後の時代に大きな影響を与えた。
  • 古代ギリシアの歴史はポリス以前の時代、ポリス全盛時代、ポリス以後の時代、の3つに分けられる。
  • ポリスは城壁に囲まれた中心となる都市と、その周辺の農地から成る。
  • ポリスの市民は貴族平民から成り、どちらも奴隷を所有していた。
  • ポリスの市民はポリスを維持するために、市民としてポリスのために活動することが求められた
  • ポリスの市民は、ポリスの政治に参加出来たが、基本的に兵士としてポリスを守るために行動した者が政治に参加出来た

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