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歴史を知る最後のキーワード「帝国」

(第1章5/12)

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古代オリエント史第1回:古代オリエント文明の概観

今回は第1章の5回目(全12回)。これまで農耕を始めた人間の社会から都市が生まれ、都市が文明を生みだす様子を見ました。さらに都市はネットワークを形作り、それが国家、文明圏というより広いネットワークとなりました。

この記事から、歴史を知るための3つのキーワードのうちの最後の一つ、「帝国」について解説します。大切な点は前に出てきたキーワード「文明」との関係です。

さてここで人類にとって重要な2つの動物の、2つ目の動物「ウマ」の登場です。

ウシは人間が最初に用いた人間以外の動力でした。ウマも人や物を運ぶことが出来ますが、それ以上に大切だったのは、人間の行動範囲が広くなったことです。この点が国家が帝国となるために必要でした。

ウマの主な役割は2つあります。一つは強大な戦力が生まれたこと。もう一つは移動と情報伝達のスピードが上がったことです。

ではウマの役割を押さえながら、帝国について説明します。

1.3 歴史を知る最後のキーワード「帝国」

帝国を学ぶ初めとして、帝国とはどのような国家を指すのか、という点を説明します。

まず帝国の定義(言葉の意味)からです。

帝国とは、強大な軍事力を背景にして、通常の国家よりも広い範囲を統治する(治める)国家のことです。

帝国は強大な軍事力を持っており、それによって異なる言語を持つ民族、人種を広大な領土の中で支配しています。

また、様々な人種、民族を支配することのできる統治の仕組みを持っていました。統治の仕組みのことを統治機構といいます。特に帝国の王、皇帝に直接使える役人を官僚といいます。そこで帝国の統治機構のことは官僚機構と呼ばれます。

まとめますと、帝国が作られる条件は2つあります。一つは強大な軍事力、そしてもう一つは統治の仕組みである官僚機構です。

それでは次に帝国が起こるきっかけについて見てみましょう。

1.3.1 帝国の始まり-鉄と戦車

帝国が起こるためには、周囲を圧倒する強大な軍事力が必要です。ではこの軍事力はどこから生まれるのでしょうか?

軍事力を支えたものは2つありました。一つは戦車の開発、もう一つは鉄の使用でした。

戦車が使われ始めたのは今からおよそ4000年前、紀元前1800年頃のことです。小アジア(現在のトルコ共和国)のアナトリア高原に起こったヒッタイト人が最初に戦車を使い始めました。

戦車は左右に2つの車輪を持ち、それを馬につなげました。馬を操縦する御者ぎょしゃと弓を放つ射手いしゅの2人が乗ります。馬を戦力として使わない国家にとって、そのスピードと破壊力はとうてい対抗できません。

さらに紀元前1200年頃には鉄を作る技術、製鉄の技術が発見されました。

話はそれますが、ここで一つ説明を加えておきます。紀元前の時代(今から約2000年以上前の時代)は時代が進むにつれて、現在により近づくにつれて、年号は小さくなります。この点は混乱しやすいので注意してください。

ところで、それまで金属と言えば青銅が使われていましたが、鉄の原料の鉄鉱石が豊富に採れたため、費用が安くて丈夫な鉄の製品は急速に広まりました。鉄製品のおかげで農業も発達しましたが、同時に鉄は武器としても使われました。

この記事では帝国とは何かをまず示し、帝国の強大な軍事力がどのように生まれたのかを考えました。

次の記事では、帝国のもう一つの特徴である官僚機構について説明します。

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