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帝国が滅亡するパターン

(第1章10/12)

今回は第1章の10回目(全12回)。これまで歴史を知る重要な3つのキーワード「都市」「文明」「帝国」について学びました。帝国を考察する最後として帝国と文明との関係を考えています。帝国は自らの権威を高めるために文明を利用しました。

この記事では、それでも終わりを迎える帝国が滅亡する決まり、パターンを見ていきます。

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古代オリエント史第1回:古代オリエント文明の概観

1.3.4.3 帝国が滅亡するパターン

国が大きく、複雑になり過ぎる

帝国が滅びるいちばんの理由は、帝国が豊かになるにつれて、国を維持する費用が膨らんでいくことです。また官僚の組織、官僚機構も大きくなり、組織そしきの仕組みが複雑になり、うまく働かなくなります。

加えて帝国の原動力となる軍隊ですが、軍も大きくなり、費用がかさむようになります。さらに軍が大きくなると、軍隊の中で派閥はばつが出来るようになります。派閥というのは、組織の中の(公式ではない)集団のことです。軍隊も人が動かしていますので、どうしても仲の良い者同士の集団が出来ます。

こうして大きな軍隊の中での勢力争いが起こります。これは官僚の組織でも同じです。組織が大きくなると派閥が出来、勢力争いが起きるのは世の常、いつの時代でも起きることです。

また、これは中国の歴代の帝国の特徴ですが、王の宮殿(中国では後宮と呼びます)で皇帝やその家族の世話をする者たちを宦官かんがんと言います。この宦官が官僚たちの勢力争いに加わることがあります。中国の歴史を見ると分かりますが、これは最悪の結果を生みます。

帝国の内部でのもめ事、つまり内紛ないふんは、王の跡継ぎを誰にするのか、という後継者こうけいしゃを決める問題から生じることがあります。帝国の官僚たちや軍人の間で出来上がった派閥の争いが、この跡継ぎ問題で一気に噴き出します。

地方が独立していく

さらに帝国の領土の、首都から離れた地方が独立し始める現象も、帝国が衰退する、勢いを失う中で見られます。

地方が独立する大きな理由は、地方も首都の文明のスタイルを模倣もほうする、真似するようになることです。そのため、首都に近い中央の地域の魅力が無くなってしまい、中央と地方のつながりが少なくなります。

また、国境に近い地域を警備する軍が独立することも、地方の独立の原因です。軍の規模が大きくなるにつれて、地方の軍隊がその地方から直接税金を取るような制度が出来ます。このような制度は、帝国が安定している間はうまく働きますが、中央の帝国政府が勢いを失い、弱体化すると、地方を監視出来なくなり帝国の崩壊を早めます。

帝国が崩壊するにつれて、地方の能力のある将軍が軍をまとめ、中央に進出し新たな帝国を作る、というのが帝国が入れ替わる一般的なパターンです。しかしその間に、帝国の政府が弱体化すると、地方の軍が勝手に国を作り、農民たちから作物を税金として搾り取って農村を荒廃させる、という悲惨な出来事が起きます。それから食うに困った農民たちが暴動を起こし、それが周りにどんどん広がる、という更なる悲劇も起きます。農民の暴動は中国の歴代の帝国の最後には必ず起こります。

さてこれまで帝国の崩壊のパターンを見てきました。結局は官僚や軍の組織が大きくなっていくことが原因でした。

では、崩壊していく帝国に対して、帝国によって利用され、保護された文明はどうなるのでしょうか?これが帝国と文明を考えるポイントです。

帝国は滅びるが、文明は生き続ける、これが基本です。

この記事では、やがて終わりを迎える帝国が滅亡するパターンを見ました。

次の記事では、第1章の最後として、帝国は滅びるが文明は生きる、となぜ言えるのか、その理由を考えます。

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