歴史のアンサンブルへようこそ

第1章:歴史を知る3つの言葉「都市」「文明」「帝国」

(全12回)

今回は第1章の1回目(全12回)。前の章では本サイトの方針と特徴について述べました。

この章では、実際の歴史の解説に入る前に、歴史を学ぶ上で欠かせない3つの言葉について学びます。その3つとは「都市」「文明」「帝国」です。都市と文明については前の章で少し触れましたが、今回は視点を変えて、より詳しく説明します。

前の章でも述べましたが、歴史を理解するには土台となる見方、歴史観が必要です(「序章:0.3 ネットワーク歴史観について」を参照)。歴史観は様々ですが、どの時代、地域でも見られる共通した現象をまとめておくと、あらゆる場面に応用が利きます。

歴史の解説を読まれる方はこちらに移動してください
記事の一覧トップ
古代オリエント史第1回:古代オリエント文明の概観

1. 世界史を知る3つのキーワード、「都市」「文明」「帝国」

これから歴史を知るために重要な3つの言葉を説明します。この記事ではその前に、人間が一つの土地に定住し、農作物を植え、都市を作る以前の歴史を説明します。

話は飛びますが、この歴史の始まりの時代を発展させる上で、2つの動物が大きな役割を演じます。その2つの動物とは何だと思われますか?

答えは「ウシ」と「ウマ」です。どこでこの2つの動物が出てくるのかにも注目して下さい。

ではまず「歴史以前の時代」について考察しましょう。ここでのキーワードは2つ、「定住」と「農耕」です。

1.1 歴史以前の時代(文明以前の時代)

この歴史以前の時代(文明以前の時代)の歴史を知るために大切な言葉は定住と農耕という2つです。加えて「牧畜」も大切ですが、やはり定住と農耕が重要です。人類にとって未だこれ以上の「革命」、人間の生活を変化させた出来事はありません。

文明以前の時代には文字による史料はありません。ですからその時代についてはある程度想像を働かせなければなりません

人類が一つの場所に定住する以前、人間は狩りをして動物の肉を取り、また木の実や果物、貝などを集め、それらを食料としていました(狩猟、採集生活)。そこで人間は、より多く食料を集められそうな場所を求めて移動を繰り返していました。人類が定住をし、農耕を始める以前の時代、狩猟、採集生活の時代はひたすら移動を繰り返していた時代でした。

定住と農耕の始まり

やがて人類は一つの場所に住み着く、定住を始めます。これは想像ですが、定住の始まりは食物としてふさわしい植物を発見したからでしょう。

決まった季節に花を咲かせ、実を結ぶ植物を見つけ、なぜそれが繰り返し実を結ぶのか、この発見が大きな変化の始まりでした。つまり種子(種)が地面に落ち、それが芽を出し、また実を結ぶのです。ならば、種子を取って植物を植えればずっと食料が得られそうです。

こうして農耕が始まりました。農作業を行うために、田畑のある場所に住み着き、定住も始まりました。

農耕をするための植物の中で、今でいう穀類(穀物)は生命を維持するのに最も適したものでした。

穀類は一粒の種子から何十倍もの新たな種を産みます。その粒の一つ一つには人間にとって必要な栄養素(生命を維持するエネルギー源)が含まれていました。これほど効率の良い作物はありません。

メソポタミアとエジプトではムギが主要な穀物となりました。ムギは乾燥に強いことが特徴です。ちなみに場所は離れて古代中国の北部、黄河の中流域では麦よりも細かい穀物のアワやキビが栽培されました。これらの作物は粒が小さいので、お粥にして食べられました。今でも中国ではお粥は大切な主食の一つです。

また動物を飼って育てる「牧畜」も始まりました。狩猟生活を送っていた時代には、動物は狩りをしてすぐに食料となりましたが、その動物を家畜にして育て、繁殖をさせ、それを肉として食用にします。家畜にする動物はウシやヒツジやヤギですが、肉を食用にするのと同時に、これらの動物の乳も栄養源となりました。またヒツジやヤギの毛を刈って、毛を糸に紡ぎ、糸を織って布を作ることも出来ました。

漁師も定住する

さて、「定住」は農作業をするためだけではありません。魚を獲ること、つまり漁業のためにも定住が必要となりました。魚を獲るには道具が必要です。釣り竿と釣り針を使って魚を釣ったり、網を使って魚を獲ります。決まった季節にいつも同じ魚が獲れるような場所に人々は住み着くようになります。漁業のための定住もありました。

さらに、農作業も漁業も人が集まって、集団で行う方が効果的です。そこで人々は農地や漁場(漁が出来る場所)に集団で住むようになります。この現象を「定住」から発展して「集住」といいます。このようにして農村、漁村が生まれました。

ではここで人類の歴史にとってとても大切な動物、「ウシ」の登場です。

実を言うとウシが文明を作った、と言ってもいい位ウシは大切な動物です。その点は次の記事で扱います。

この記事では、文明以前の人類について考察しました。この時代は文字による記録がないので、大昔の遺跡から見つかる品々をもとにして考えていきます。ある程度の想像も必要でした。

文明以前の時代のキーワードは2つ「定住」と「農耕」でした。同時に「牧畜」も始まりました。最後に人々は集団となって住み(集住)、農村、漁村を作りました。

次の記事では歴史を知る3つのキーワードのうちの2つ「都市」と「文明」を説明します。

次の記事

農村から都市が生まれるステップ-余剰農作物が都市を作る

次の記事

はじめに-ネットワーク歴史観について